遺言執行者の権限と遺言執行

相続対策としての遺言作成は以前に比べると一般的と言ってもいいくらいに普及してきました。

遺言作成における要は分割方法の指定などの遺言事項ですが、これも最近ですが徐々に普及してきた付言事項も遺言事項に並んで重要な柱になります。

この2つ柱をしっかり組む(内容を吟味し仕上げる)ことが遺言作成においては欠かせないものとなります。

それ以外に、必要に応じて遺言者と同時に或いは先に受遺者がなくなった場合に備えて補充遺言をしておくことも検討する必要があります。

遺言事項、付言事項、補充遺言等が完成し、これで万全かというとあと一つ必要なものがあります。

遺言執行者の指定です。遺言執行者とは遺言に書かれている内容を実現させるための手続きを行う者のことですが、この遺言執行者の指定が抜けてしまう遺言が多々あります。公正証書遺言作成の場合は公証人のアドバイスによって遺言執行者の指定漏れを防ぐことが可能ですが、自筆証書遺言作成の場合にはこのようなアドバイスをしてくれる人が周りに居ないと抜け落ちてしまうことになりがちです。

遺言執行者の指定がなくても遺言が無効になるわけではないのですが、遺言事項の中には認知や廃除など遺言執行者がいなければできないものもありますので注意が必要です。

一般的な分割方法の指定であれば遺言執行者の指定がなくても遺言執行は可能ですが、共同相続人全員で遺言内容の実現のため手続きを行わなければなりませんから手続きに係る業務は煩雑になってしまいます。

遺言執行者は共同相続人の中の1人を指定することも、第三者を指定することも、1人ではなく2人以上の複数人を指定することも可能です。ただし、遺言執行時に未成年者や破産者である者は欠格者に該当し遺言執行者に就任することはできません。

遺言執行者に就任し任務を開始した時は、遅滞なく遺言の内容を相続人に通知しなければならず、その通知は、遺言により指定された者は遺言の写しを、家庭裁判所の選任された者は選定決定正本の写しを添付して行わなければなりません(改正相続法:2019.7.1施行)。

また、特定財産承継遺言(改正相続法:旧相続させる旨の遺言)により遺言執行者に指定された者は、遺産に属する特定の財産が預貯金債権である場合は、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れ(解約の申入れはその預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る)をすることができる(改正相続法:2019.7.1施行)、という権限を有することになりました。

遺言の執行においては金融機関とのトラブル等が多かれ少なかれあったことは事実です。改正相続法が施行された後の金融機関の対応に興味がありますが、改正相続法に遺言執行者の権限として明確に規定されたので無視することはできないでしょう。

ここ数年においては金融機関の対応も一時期よりは柔軟になってきたようではありますが、まだ一部の金融機関では頑なな対応ともいえるようのものも少なからず見受けられるようです。

遺言作成時には遺言執行を見据えて内容を吟味していく必要があるでしょう。